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ベーチェット病の原因

ベーチェット病の原因

ベーチェット病の原因はよくわかっていません。

しかし、最近の研究により、ベーチェット病になりやすい遺伝的な要因と、さまざまな環境的な要因が複雑に関与することによって、免疫バランスの異常がおこり、発症につながると考えられています。

ベーチェット病の原因

1-9)より作図

1)日本リウマチ財団 教育研修委員会・日本リウマチ学会生涯教育委員会 編:リウマチ病学テキスト第2版. 診断と治療社, p400-408, 2016

2)岳野光洋:リウマチ科. 58:412-419, 2017

3)岳野光洋:リウマチ科. 54:191-197, 2015

4)Mizuki N et al.:Nat Genet. 42:703-706, 2010

5)Kirino Y et al.:Nat Genet. 45:202-207, 2013

6)Kirino Y et al.:Proc Natl Acad Sci U S A . 110:8134-8139, 2013

7)Takeuchi M et al.:Nat Genet. 49:438-443, 2017

8)Takeuchi M et al.:J Autoimmun. 64:137-148, 2015

9)Ishigatsubo Y(ed.):Behçet’s Disease. Springer, p1-20, 2015

遺伝的な要因

私たちの身体の細胞の表面にはヒト白血球抗原(HLA)という物質が存在します。

HLAの型とは、白血球の血液型のようなもので、生まれながら遺伝子によって決まっています。

HLAの型には膨大な種類があり、免疫細胞が自己(自分)と非自己(自分でないもの)を識別する手がかりとなっています。

ベーチェット病患者さんは、HLA-B51という特定のHLAの型をもっている人が多く(35~80%)1)、このHLA-B51がベーチェット病の発症に関係があると考えられています。

ただし、HLA-B51があれば必ずベーチェット病を発症するわけではありません。HLA-B51をもっていないベーチェット病患者さんもいれば、HLA-B51をもっていてもベーチェット病ではない方も多いことから、発症には他の要因も関与していると考えられます。また、ベーチェット病の発症に関与する遺伝子は他にも複数報告されています2)

また、ベーチェット病は、親から子供に受け継がれた特定の遺伝子の変異により必ず発症するような遺伝病でもありません。ベーチェット病患者さんのご家族がベーチェット病を発症したという報告は多くはありません。

1)目黒明 他:あたらしい眼科. 23:1521-1527, 2006

2)Zeidan MJ et al.:Auto immun Highlights. 7:4, 2016

免疫バランスの異常

私たちの身体には、細菌やウイルスなどの病原体から自然に身を守る「自然免疫」と、免疫の記憶によって身を守る「獲得免疫」の働きが備わっています。

自然免疫の異常が自己炎症、獲得免疫の異常が自己免疫とよばれています。

これらの免疫を担当するのが白血球をはじめとする免疫細胞です。

ベーチェット病患者さんの身体の中で、自然免疫と獲得免疫の二つの免疫の働きに異常が生じることで、過剰な免疫反応や炎症が引きおこされ、さまざまな症状が現れます。

自己炎症(自然免疫)では、特にマクロファージなどが、自己免疫(獲得免疫)では、特にリンパ球が異常に活性化することで炎症を引きおこす物質を過剰に放出し、それによって好中球などの他の免疫細胞も活性化して炎症を悪化させていると考えられています。

ベーチェット病における免疫バランスの異常

ベーチェット病における免疫バランスの異常

監修:横浜市立大学 名誉教授/客員教授
横浜リウマチ・内科クリニック 院長 石ヶ坪良明先生

リンパ球:
白血球の一種で、免疫において中心的な役割を果たす。
リンパ球にはT細胞、B細胞、NK細胞などの種類があり、病原体を記憶して血管やリンパ管など全身をパトロールしていて、記憶した病原体を見つけると協力して攻撃・排除しようとする。

好中球:
白血球の一種で、病原体が体内に侵入するといち早く動き出して病原体を飲み込み消化する。
好中球は、サイトカインなどの炎症を引き起こす物質が豊富にある部位に集まって活性化し、更に炎症を引き起こす物質も放出する。

マクロファージ:
白血球の一種で、好中球と同様に病原体を飲み込み消化し、老廃物の処理を行う。
また、体内に侵入した病原体の情報をT細胞に伝え、T細胞を活性化させる。