消化器病変

症状

多くの場合、消化管の回盲部という部分に潰瘍ができて、腹痛、下痢、血便、下血などの自覚症状が現れます。日本人に多い症状で、ベーチェット病患者さんの1~2割にみられます1)

ベーチェット病では、他の病気と比べると、粘膜が深く掘れたような潰瘍ができることが特徴です。潰瘍が深くなり消化管に穴が開くと、大量出血をおこす危険があるため、緊急手術を行う場合があります。

消化器病変
  • 消化管に潰瘍が現れる場合は腸管(型)ベーチェット病に分類されます。
  • とくに多いのは回盲部という部分の潰瘍ですが、食道から直腸のいずれの場所でもおこる可能性があります。

1)岳野光洋:リウマチ科. 60:322-329, 2018

治療

腸管(型)ベーチェット病では、重症度の高い症状の治療を中心に治療方針が検討されます。

内臓の障害(および後遺症)を最小限に抑えることを目指し、いま現れている症状をすみやかに抑える治療(寛解導入療法)を行います。症状が軽快したら、再発を抑える維持療法を続けていきます。

寛解導入療法では、免疫反応や炎症を強力に抑える治療薬を用いるため、入院などによって、感染症などの副作用を慎重に管理しながら治療します。

寛解導入には、軽症では潰瘍性大腸炎の治療に用いられる5-ASA製剤などが用いられ、中等症以上ではステロイド内服薬、TNF-α阻害薬が使用されます。

これらの治療で寛解が得られない場合は免疫抑制薬を使用することもあります。

維持療法としては、5-ASA製剤やTNF-α阻害薬を継続投与します。

腸管が狭くなる、穴があく危険があるなど症状が重い場合は、食事摂取を控えて静脈から栄養成分を点滴する(完全静脈栄養療法)または、消化しやすい栄養剤を経口摂取する(経腸栄養療法)こともあります。

重症の病変が治療薬で改善が得られない場合は、腸管の一部を切除する手術を行うこともあります。

消化器病変に使用される主な治療薬

治療薬 説明
5-ASA製剤 炎症を抑えるお薬です。
ステロイド内服薬

全身の免疫反応や炎症を抑えるお薬です。

炎症を抑える効果は強力ですが、長期使用による副作用を防ぐため、症状が改善したら量を少しずつ減らしていきます。

TNF-α阻害薬 免疫機能にかかわり、炎症を引きおこす特定の物質(TNF-α)の働きを抑えるお薬です。
免疫抑制薬 免疫に関係するさまざまな細胞の働きを抑えて、免疫反応と炎症を抑えるお薬です。

StageⅠの場合でも条件を満たすと医療費助成を受けられる場合があります。

HLA-B51やHLA-A26が陽性でも、それだけでベーチェット病と診断することはできません。なお、遺伝子検査には保険は適用されません。

最近では針反応で陽性を示す患者さんが少なくなってきており、あまり行われなくなってきています。

炎症が治まっても元の健康な状態に戻すことができない臓器の障害を指す。
ベーチェット病では主に眼障害や消化器病変、血管病変、中枢神経病変などによる内臓の障害(および後遺症)が生じることがある

病気や健康状態が生活の質(Quality of Life)に及ぼす影響を測るための指標。身体的な側面(身体機能、痛み、日常活動など)、役割・社会的な側面、精神的な側面、活力・倦怠感などについての質問票を用いて健康に関係するQOLの状態を調べて数値化する。
SF-36、EQ-5Dなどが知られている。

皮膚や粘膜の組織の一部が壊死してなくなっている状態

虹彩、毛様体、脈絡膜は眼球を包むぶどうの実のような色の組織であり、まとめて”ぶどう膜”とよばれる。ぶどう膜とそれに隣接する部位におこる炎症を “ぶどう膜炎”という

小腸のうち、胃や十二指腸に近い側の半分弱を空腸、大腸に近い側の半分強を回腸という。また、大腸の始まりの部分を盲腸といい、そのつなぎ目の部分を回盲部という。

本来は痛風発作の治療や予防に使用されるお薬ですが、ベーチェット病の治療にも使用されています。