精巣上体炎(副睾丸炎)

症状

あまり多くの患者さんには現れない症状であり、日本ではベーチェット病患者さんの約5%(男性の約1割)にみられます1)

精巣上体(副睾丸)は精巣の上に位置する小さなコイル状の管の集まりで、その炎症により睾丸の辺りの痛み、腫れ、赤みなどの症状が現れます。

精巣上体炎(副睾丸炎)の症状は数日程度でおさまりますが、くり返し現れることがあります。

一般的な精巣上体炎(副睾丸炎)は細菌感染によっておこりますが、ベーチェット病では重症の患者さんで現れやすく、血管の炎症が関与していると考えられています2,3)

精巣上体炎(副睾丸炎)
  • 男性の患者さんに現れる症状です。
  • 痛みと腫れが現れ、数日程度でおさまります。
  • ベーチェット病以外の疾患ではあまりみられないため、外陰部潰瘍と同様に、診断のポイントになる症状の一つです。

1)岳野光洋:リウマチ科. 60:322-329, 2018

2)Cho YH et al.:J Urol. 170:1231-1233, 2003

3)Pannek J et al.:Scand J Rheumatol. 26:151-154, 1997

治療

精巣上体炎(副睾丸炎)に対しては、痛みや炎症を抑える非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)とステロイド内服薬、症状の改善と再発予防のために痛風・家族性地中海熱治療薬が使用されます。

精巣上体炎(副睾丸炎)に使用される主な治療薬

治療薬 説明
非ステロイド性抗炎症薬
(NSAIDs)

痛みと炎症を抑えるお薬です。

胃腸障害の副作用を防ぐために、粘膜保護薬と一緒に使用することがあります。

ステロイド内服薬

炎症を抑えるお薬です。

炎症を抑える効果は強力ですが、長期使用による副作用を防ぐため、症状が改善したら量を少しずつ減らしていきます。

痛風・家族性地中海熱治療薬

本来は痛風発作の治療や予防に使用されるお薬です。

白血球の働きを抑え、炎症を抑えるため、ベーチェット病の治療にも使われます。

StageⅠの場合でも条件を満たすと医療費助成を受けられる場合があります。

HLA-B51やHLA-A26が陽性でも、それだけでベーチェット病と診断することはできません。なお、遺伝子検査には保険は適用されません。

最近では針反応で陽性を示す患者さんが少なくなってきており、あまり行われなくなってきています。

炎症が治まっても元の健康な状態に戻すことができない臓器の障害を指す。
ベーチェット病では主に眼障害や消化器病変、血管病変、中枢神経病変などによる内臓の障害(および後遺症)が生じることがある

病気や健康状態が生活の質(Quality of Life)に及ぼす影響を測るための指標。身体的な側面(身体機能、痛み、日常活動など)、役割・社会的な側面、精神的な側面、活力・倦怠感などについての質問票を用いて健康に関係するQOLの状態を調べて数値化する。
SF-36、EQ-5Dなどが知られている。

皮膚や粘膜の組織の一部が壊死してなくなっている状態

虹彩、毛様体、脈絡膜は眼球を包むぶどうの実のような色の組織であり、まとめて”ぶどう膜”とよばれる。ぶどう膜とそれに隣接する部位におこる炎症を “ぶどう膜炎”という

小腸のうち、胃や十二指腸に近い側の半分弱を空腸、大腸に近い側の半分強を回腸という。また、大腸の始まりの部分を盲腸といい、そのつなぎ目の部分を回盲部という。

本来は痛風発作の治療や予防に使用されるお薬ですが、ベーチェット病の治療にも使用されています。