Nさんの体験談(前編)

Mさん:50歳代(診断から約8年)

Nさん:40歳代
(診断から約8年)

自分の体を大事にする
きっかけをくれた
ベーチェット病
~新たな口内炎治療薬との出会い~

長年悩まされてきた口内炎、病名を聞いて仰天

ベーチェット病の診断のきっかけとなる症状があらわれたのは、41歳の時でした。いつも通り仕事をしていると、突然片目の視界の中に砂嵐のようなものが見えるようになったのです。その症状は日に日にひどくなっていったため、「これはただ事ではない」と思い近くの眼科クリニックを受診したところ、ぶどう膜炎と診断されました。そしてすぐに、ぶどう膜炎を引き起こしている原因を調べるために大きな病院へ紹介されました。

病院では眼科のほかに膠原病内科でも診察していただき、眼科的検査に加えて全身の検査などを行った結果、ベーチェット病と診断されました。そこで初めて、長年悩まされてきた「ずっと治らない口内炎」や「身に覚えのない虫刺されのあとや打撲のような赤いあざ」がベーチェット病によるものだということがわかったのです。まさか、これらの症状がベーチェット病という一つの全身性の病気につながっているとは思いもよらず、とてもおどろきました。

特に口内炎に関しては、小さい頃からできやすく、以前から血液検査の炎症の数値が高かったことも相まって、体質だと思っていたからです。口内炎は一度できると小指の先ほどの大きさにもなり、とても痛みの強いものでしたが、ビタミン剤や歯科医院で処方されたステロイド外用薬を使用しても少しも改善がみられませんでした。また、治るまでに2週間程度かかり、一つ治ってもその頃にはまた新しい口内炎ができているため、常に口内炎がある状態が7年ほど続いていましたね。その原因がベーチェット病だとわかり、「やっぱり普通の口内炎ではなかった」と納得がいきました。

「口内炎に効く薬があるんだ」とはじめて実感

ベーチェット病の診断後はすぐに治療を開始したのですが、口内炎に対する効果はあまり感じられませんでした。しかし、皮膚症状はおさまっていたため、それだけでも良かったと自分を納得させていました。口内炎とは約7年間もつき合ってきて、口内炎がないときの記憶は薄れて痛みがある状態が当たり前になっていたため、半ばあきらめた状態だったのだと思います。

そのような状況が変わったのは、48歳の時です。主治医から「口内炎に対する新たな治療薬がでたよ」と提案されました。さっそく新たな口内炎治療薬を飲み始めると、2週間後に口内炎の症状がおさまっていることに気がつき、おどろいたことを覚えています。その後、再発はみられるものの1ヵ月に1回程度の頻度に減り、口内炎ができても大きくはならずに3日から1週間ほどでおさまるようになりました。自然治癒を待つしかない症状だと長年思っていましたので、「口内炎に効く薬ってあるんだ」とはじめて実感し、とても感動しましたね。また、「小さいうちに食い止めたい」といった治療に対する前向きな気持ちももてるようになりました。

新たな口内炎治療薬を開始する際、私はもともと胃腸が強くはないため、初期にあらわれやすいという胃腸の副作用が心配でした。しかし、「口内炎を治したい」という気持ちが強かったため、挑戦してみることにしたのです。胃薬を併用して少量ずつ飲み始めたところ副作用はみられず、現在約1年半が経ちますが減量することなく継続できています。

食べる楽しみを取り戻せた幸せ

口内炎が改善して一番うれしい変化は、食べる楽しみを取り戻せたことです。新たな口内炎治療を始めるまでは、いかに口内炎の痛みを防御して食事をとるかということに全力を注いできたからです。辛いものが大好きなのに「食べたい」という気持ちを我慢するしかなかったり、痛みが強いときには市販の局所麻酔成分を配合した外用薬で口の中を麻痺させてなんとか食事をとったりするなど、だましだましで口内炎とつき合ってきましたので、食べることを心から楽しむことができなかったのです。

口内炎のせいで、人間の三大欲求の一つである食欲が害されてしまうことは、本当につらいことです。しかし、今は新たな口内炎治療薬のおかげで、「食べたい」という気持ちをためらわなくて済むようになりました。その時々の気分で、食べたいものや好きなものを食べられることは、とても幸せなことだと身に染みて感じています。

つらい症状や気持ちを訴える積極的な姿勢が
新たな口内炎治療につながった

私はいつも手帳に日々の気づきや変化などいろいろなことを書いているのですが、ベーチェット病の診断前後の時期の手帳を見返すと、体調や症状のことも書き込んでありました。しかし、その頃は仕事がとても忙しくて自分の体調を顧みる余裕がなく、すぐに病院に行くこともできていませんでした。正直なところ、可能であればぶどう膜炎を発症したくなかったですし、眼症状が進行するもっと前に病院に行けばよかったと思うこともあります。しかし、ぶどう膜炎の症状があったからこそベーチェット病の診断に至ることができ、長年悩まされてきた口内炎や皮膚症状に対する適切な治療も受けることができるようになったのです。ベーチェット病は、「自分の身体ときちんと向き合い、大事にしなければいけない」ということをわからせてくれたのだと思っています。

そうした背景もあって、治療開始後は、主治医に自分の症状や気持ちについて積極的に相談するようにしています。もちろん、口内炎が治らないことや、その痛みで食事がつらいことも診察のたびに訴え続けていましたので、きっと私の口内炎のことが先生の記憶に強く残っていたのではないでしょうか。新たな口内炎治療薬が登場するとほどなくして、「Nさん、口内炎に困っていたね」と私に提案してくださいました。

体質だと自分に言い聞かせ、じっと耐えてやり過ごしてきた口内炎ですが、自分から主治医とコミュニケーションをとってつらい症状や気持ちについて積極的に相談してきたからこそ、早い段階で新たな口内炎治療薬と出会うことができたのだと思います。その結果、今では食べることを楽しめる暮らしを取り戻すこともできました。新たな治療に踏み切ることに対して不安を感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、薬が合うか合わないかは試してみないとわからないものです。私の経験をお伝えすることで、食べることが大好きなベーチェット病の患者さんが新たな口内炎治療薬と出会い、おいしくごはんを食べられるようになってもらえたら喜ばしい限りです。

自分の身体を大事にするためのヒント

  • 気になる症状は早い段階で医師に相談する
  • どんなに忙しくても時には立ち止まり、自分の身体と向き合う
  • 治療をあきらめずに、つらい症状や気持ちは医師に訴え続ける

口内炎が改善し心の余裕を取り戻したNさんの今は、後編でご紹介します。

※ 掲載内容は患者さん個人の体験談であり、すべてのベーチェット病患者さんが同様の経過をたどるわけではありません。ご自身の症状で気になることや治療に関することは、主治医またはお近くの医療機関にご相談ください。