外陰部潰瘍

症状

診断時から多くの患者さんに現れるベーチェット病に特徴的な症状の一つです。

外陰部潰瘍の症状自体は1~2週間で治りますが、ベーチェット病の経過の中で長い年月にわたり何度もくり返し現れることのある症状です。強い痛みのため日常生活に支障がでることもあります。

外陰部潰瘍の実例写真

写真提供:石ヶ坪良明先生

  • 性器の周囲に痛みのある潰瘍が現れ、痕が残ってしまうこともあります。
  • 女性の場合、性周期にあわせて症状が悪くなることがあります。
  • 相談しにくい症状ですが、ベーチェット病以外ではほとんどみられないため、診断のポイントになることも少なくありません。

治療

外陰部潰瘍の症状が軽い場合はステロイド外用薬による治療が行われます。また、粘膜保護薬を使用することもあります。症状がない時期には、これらの治療はお休みすることができます。

ステロイド外用薬で十分な効果がみられない場合には、痛風・家族性地中海熱治療薬が使用されます。

このお薬は、本来は痛風発作の治療や予防に使用されるお薬ですが、ベーチェット病のさまざまな症状に効果があることがわかり、治療に使用されています。

外陰部潰瘍の症状がくり返し現れ続ける患者さんでは、いまある症状の改善に加えて、症状がくり返し現れることを抑えるためにも使用されます。

症状がおさまっている時期も服用を続けることで、ベーチェット病のさまざまな症状が再び現れることを抑える効果が期待できます。

以上の治療で効果がみられない場合には、ステロイド内服薬を使用することもあります。眼症状や特殊型など他の症状を伴う場合は、その治療として免疫抑制薬やTNF-α阻害薬などの強力な治療を行うこともありますが、これらの治療は通常、外陰部潰瘍のみの患者さんには使用されません。

外陰部潰瘍に使用される主な治療薬

治療薬 説明
ステロイド外用薬

皮膚や粘膜の炎症を抑えるお薬です。

症状にあわせて、飲み薬や注射剤と組み合わせて使用します。

粘膜保護薬 粘膜の血流を増やし、粘液を分泌させて、粘膜を保護するお薬です。
痛風・家族性地中海熱治療薬

本来は痛風発作の治療や予防に使用されるお薬です。

白血球の働きを抑え、炎症を抑えるため、ベーチェット病の治療にも使われます。

ステロイド内服薬

炎症を抑えるお薬です。

炎症を抑える効果は強力ですが、長期使用による副作用を防ぐため、症状が改善したら量を少しずつ減らしていきます。

TNF-α阻害薬 免疫機能にかかわり、炎症を引きおこす特定の物質(TNF-α)の働きを抑えるお薬です。

StageⅠの場合でも条件を満たすと医療費助成を受けられる場合があります。

HLA-B51やHLA-A26が陽性でも、それだけでベーチェット病と診断することはできません。なお、遺伝子検査には保険は適用されません。

最近では針反応で陽性を示す患者さんが少なくなってきており、あまり行われなくなってきています。

炎症が治まっても元の健康な状態に戻すことができない臓器の障害を指す。
ベーチェット病では主に眼障害や消化器病変、血管病変、中枢神経病変などによる内臓の障害(および後遺症)が生じることがある

病気や健康状態が生活の質(Quality of Life)に及ぼす影響を測るための指標。身体的な側面(身体機能、痛み、日常活動など)、役割・社会的な側面、精神的な側面、活力・倦怠感などについての質問票を用いて健康に関係するQOLの状態を調べて数値化する。
SF-36、EQ-5Dなどが知られている。

皮膚や粘膜の組織の一部が壊死してなくなっている状態

虹彩、毛様体、脈絡膜は眼球を包むぶどうの実のような色の組織であり、まとめて”ぶどう膜”とよばれる。ぶどう膜とそれに隣接する部位におこる炎症を “ぶどう膜炎”という

小腸のうち、胃や十二指腸に近い側の半分弱を空腸、大腸に近い側の半分強を回腸という。また、大腸の始まりの部分を盲腸といい、そのつなぎ目の部分を回盲部という。

本来は痛風発作の治療や予防に使用されるお薬ですが、ベーチェット病の治療にも使用されています。