太い血管におきる炎症が原因で、血管が狭くなり、詰まったり(閉塞、血栓)、弱くなって膨れたり(動脈瘤)します。日本人ではあまりみられない症状で、ベーチェット病患者さんの約1割にみられます1)。
太い静脈が狭くなり詰まる(深部静脈血栓症)と、血流が心臓に戻れず滞って、痛みやむくみ、皮膚潰瘍がおこります。
太い動脈が狭くなり血流が滞ると、病変の部位によっては臓器の血流不足によるさまざまな症状が現れます。
また、動脈瘤は身体の中心を通る大きく重要な動脈にできやすく、自覚症状はほとんどありません。
しかし、重要な動脈の動脈瘤が破裂すると生命にかかわる状態となりうるため、炎症を抑え血管病変を悪化させない治療が重要です。
血管病変は男性に多く、また重症化しやすい肺の血管病変も男性に現れやすいことが知られています。
1)岳野光洋:リウマチ科. 60:322-329, 2018
血管(型)ベーチェット病では、重症度の高い症状の治療を中心に治療方針が検討されます。
内臓の障害(および後遺症)を最小限に抑えることを目指し、いま現れている症状をすみやかに抑える治療(寛解導入療法)を行います。症状が軽快したら、再発を抑える維持療法を続けていきます。
寛解導入療法では、免疫反応や炎症を強力に抑える治療薬を用いるため、入院などによって、感染症などの副作用を慎重に管理しながら治療します。
寛解導入には、ステロイド内服薬や免疫抑制薬が使用されます。
動脈瘤、肺病変、一部の重症な深部静脈血栓症などの重症例の寛解導入には高用量ステロイド療法と免疫抑制薬の静脈注射療法を併用することもあります。
特に症状が重い場合には、ステロイドパルス療法も検討されます。
症状が軽快したらステロイドなどの減量を行い、維持療法として免疫抑制薬の飲み薬を継続します。
深部静脈血栓症の患者さんには血栓ができにくくする抗凝固薬を使用することもあります。
血管病変に使用される主な治療薬
治療薬 | 説明 |
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ステロイド内服薬 |
全身の免疫反応や炎症を抑えるお薬です。 炎症を抑える効果は強力ですが、長期使用による副作用を防ぐため、症状が改善したら量を少しずつ減らしていきます。 |
高用量ステロイド療法 |
全身の免疫反応や炎症を強力に抑える治療です。 高用量のステロイドを1~2週間、静脈注射(点滴)または飲み薬で投与し、症状の軽快がみられたら量を少しずつ減らしていきます。さらに大量のステロイドを数日投与する治療法は、ステロイドパルス療法とよばれます。 |
免疫抑制薬 | 免疫に関係するさまざまな細胞の働きを抑えて、免疫反応と炎症を抑えるお薬です。 |
免疫抑制薬の静脈注射療法 |
免疫に関係するさまざまな細胞の働きを抑えて、免疫反応と炎症を強力に抑える治療です。 高用量の免疫抑制薬を点滴で2~4週ごとに断続的に投与します。 |
StageⅠの場合でも条件を満たすと医療費助成を受けられる場合があります。
HLA-B51やHLA-A26が陽性でも、それだけでベーチェット病と診断することはできません。なお、遺伝子検査には保険は適用されません。
最近では針反応で陽性を示す患者さんが少なくなってきており、あまり行われなくなってきています。
炎症が治まっても元の健康な状態に戻すことができない臓器の障害を指す。
ベーチェット病では主に眼障害や消化器病変、血管病変、中枢神経病変などによる内臓の障害(および後遺症)が生じることがある
病気や健康状態が生活の質(Quality of Life)に及ぼす影響を測るための指標。身体的な側面(身体機能、痛み、日常活動など)、役割・社会的な側面、精神的な側面、活力・倦怠感などについての質問票を用いて健康に関係するQOLの状態を調べて数値化する。
SF-36、EQ-5Dなどが知られている。
皮膚や粘膜の組織の一部が壊死してなくなっている状態
虹彩、毛様体、脈絡膜は眼球を包むぶどうの実のような色の組織であり、まとめて”ぶどう膜”とよばれる。ぶどう膜とそれに隣接する部位におこる炎症を “ぶどう膜炎”という
小腸のうち、胃や十二指腸に近い側の半分弱を空腸、大腸に近い側の半分強を回腸という。また、大腸の始まりの部分を盲腸といい、そのつなぎ目の部分を回盲部という。
本来は痛風発作の治療や予防に使用されるお薬ですが、ベーチェット病の治療にも使用されています。