Tさんの体験談(後編)

Tさん:20歳代(診断から約3年)

Tさん:20歳代
(診断から約3年)

⻑い道のりを経て⾒つけた
⾃分らしい⽣き⽅
〜病気とともに前向きに生きる〜

ベーチェット病は「台風」のような存在

私にとってベーチェット病は、「台風」のような存在です。台風って突然すごい勢いで雨風がやってきますが、自分ではコントロールできないですよね。ベーチェット病の症状も、予測困難で気分屋。急に現れるので準備も避けることもできないし、日常生活に大きく影響するにもかかわらず、症状の波がおさまるのを待っていることしかできません。また、季節の変わり目といえば台風がやってくる時期ですが、症状が悪化しやすい時期でもあります。季節の変わり目に注意が必要なところも、ベーチェット病と台風は似ていますね。

予測困難なベーチェット病とつき合っていくために、気を付けていることが2つあります。1つ目は「よく寝ること」です。十分な睡眠は、症状悪化を予防し体力を回復させるために重要です。質の良い睡眠を取れるように寝具に気をつかったり、体を冷やさないことを意識したりもしています。2つ目は「ストレスをためないこと」です。ストレスが加わると症状が悪化しやすいため、家族に話を聞いてもらったり、同じような境遇にある友達と積極的にかかわり励まし合ったりする時間を大切にしています。

また、自分の症状がどのような状況で悪化しやすいのかを把握することも重要です。「寒暖差」や「環境の変化」などもベーチェット病の症状に影響を及ぼす要因なのですが、私の場合は特に暑い時期に症状が悪化しやすい傾向があります。そのため、夏は可能な限りクーラーのある部屋で過ごすことなどを意識しています。環境の変化も気づかないうちにストレスの原因になることがあるため、新しい仕事に就いたり引っ越しなどをする際は先生とよく相談して、体調を考慮しつつタイミングを見極めるようにしています。

気になる症状や希望は積極的に医師に伝えるとともに、
新薬の情報などは自ら取りに行く

私は治療にも積極的に参加するようにしており、特に診察時以外にみられた症状や副作用については「いつ、どのような症状があったのか」を可能な限り細かく医師に伝えています。そのために、スマートフォンのメモ機能などを活用して記録をとっておくことが有用です。また診察時間は限られているため、治療や日常生活に対して不安に思うことなどは看護師さんに相談することもあります。医療関係者の方と積極的にコミュニケーションをとり、気になる症状や希望などを自分からしっかりと伝えることで、病気や治療に対する不安の払拭につながっています。

病気や治療に関する新しい情報については、必ずしも医師から教えてもらえるわけではないので、患者会に参加したり、インターネットやSNSを活用したりして情報を集めています。そこで知った情報をもとに、医師に具体的な相談をすることもできるため、自ら情報を取りに行く姿勢も大事だと感じています。

普通の口内炎とは違う、ベーチェット病の口内炎。
治療薬登場で新たな選択も可能に

ベーチェット病の症状の中でも、私が一番困っているのは口内炎なのですが、口内炎というと「誰にでもできる、あの口内炎」と思う人も多いかもしれません。しかし、ベーチェット病の口内炎は普通の口内炎とは違い、えぐれて穴が空いたようになったり大きなものもありますし、一度にたくさんできたりもします。痛み止めや塗り薬を使用してもとにかく痛みが強いため、口内炎ができている間は、食事はもちろんのこと飲みものを口にすることもつらく、食欲もなくなってしまいます。そのようなときは、刺激物を控え、お粥やゼリー状の食品など喉越しの良いもので栄養を摂るようにしています。

普段の食事に関しては、口内炎を気にしすぎて食べたい気持ちを我慢していると、かえってそれがストレスになってしまうこともあるので、食べたいものを食べるようにしていますね。

口内炎治療の最新情報についても、患者会やインターネット、SNSなどを活用して積極的に情報収集するようにしています。現在、口内炎の新しい治療薬が出ているので主治医に相談し、今後の使用について検討しています。

心の支えは、仲間とのつながり

日常生活でいろいろな工夫をしているものの、頻繁に出てくる症状もあります。また、予期せぬタイミングで症状が出ることも少なくなく、ときには心が折れそうになることもあります。

そんなとき、心の支えになっているのが同じ境遇にある友達とのつながりです。私の周りにはベーチェット病のほかに、白血病やクローン病などさまざまな難病をもつ友達がいます。そのような病気と向き合いながらがんばっている友達と連絡を取り合い、日々の体調や悩みを話したり、身近な幸せを見つけて共有したりしながら、お互いに励まし合っています。どんなに離れた場所にいても互いに理解し合える存在はとても特別ですし、ずっと大切にしていきたいつながりです。

見た目ではわかりづらい病気である
ベーチェット病の認知が広がり、受け止めてほしい

これまでに何度か仕事に就いていたことがあるのですが、職場に病気のことは伝えていたものの、「特別扱いされたくない」「見下されたくない」という私自身の気持ちもあり、無理してしまうことが多くありました。ベーチェット病は口内炎をはじめとするさまざまな症状がみられますが、見た目にはわかりづらい病気です。そのため、自分なりにわかりやすく説明をしても、ベーチェット病がどういう病気なのか、どれだけつらいのかを理解してもらうことは難しいように感じており、まずはベーチェット病という病気があることを多くの人に認知してもらうことが大事だと思っています。そして、もしこの病気をもっている人が近くにいたら、やさしく受け止めてもらえるとうれしいですね。例えば、病気で仕事を休まざるをえないときは、「休んでも大丈夫だよ」といった言葉をかけてもらうだけでもとても安心しますし、がんばろうという前向きな気持ちになれるのです。

ベーチェット病に限らず、見た目ではわからなくても病気や障害をもっている人はたくさんいると思います。最近、「ヘルプマーク」が少しずつ普及してきていますので、それとともに見た目ではわからなくても困難を抱えている人たちがいることを、世の中に知ってもらいたいです。それだけでも、私たちのような見た目ではわかりづらい病気や障害をもっている人が、一歩外に出ていく勇気や安心感を得ることができるのではないでしょうか。健康な人と同じように夢もあれば、希望もあります。ベーチェット病患者だって一人の人間として、希望をもって生きることができる社会であってほしいと願っています。

私自身も希望は失っていません。将来の夢は、ベーチェット病である自分を理解し、受け止めてくれるパートナーを見つけて結婚することです。このように希望をもって前向きに日々過ごせているのは、家族や友達がベーチェット病という病気に偏見をもたず、私自身を受け止め支え続けてくれているおかげだと思っています。私も、自分の経験を伝えていくことで、一人でも多くのベーチェット病患者さんの役に立てればとてもうれしいです。

※ヘルプマーク:外見からはわからなくても内部障害や難病などで援助や配慮を必要としている人が、それを周囲に知らせることで援助を得やすくなるよう作成されたマーク。東京都内の公共交通機関から利用が始まり、現在では全国的に普及が進められています。

ベーチェット病と
今を生きるためのヒント

  • どのような状況で症状が悪化しやすいのかを把握し、無理なく予防に努める
  • 受け身では何も変わらない、やれることはやってみる
  • 希望を捨てず、ベーチェット病になったからこその人生を楽しむ

Tさんが病気を前向きに受け入れるまでの道のりは、
前編でご紹介します

※ 掲載内容は患者さん個人の体験談であり、すべてのベーチェット病患者さんが同様の経過をたどるわけではありません。ご自身の症状で気になることや治療に関することは、主治医またはお近くの医療機関にご相談ください。